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かわしま法務事務所の電磁的事件簿 ~笑う門には福来る~

子どもの判断だけで親の認知症対策の民事信託を組成するリスク

最近メディアなどで民事信託を「究極の財産管理ツール」などと
良い部分ばかりクローズアップされることが多くなったせいでしょうか。

民事信託に関して私に問い合わせがあったものの中には、
お話を聞いている限り民事信託以外の制度の活用が望ましいと思われる場合でも、
民事信託を活用して欲しいと仰るばかりで進まなくなることもあります。

問題解決のために自分で情報を集め検討をされる熱意には頭が下がりますが、
ただ「信託を取り組んでもらえるかどうか」という視点だけに囚われてしまうのは
検討すべき本質的な部分を蔑ろにしてしまうものであり、残念に思うこともあります。

民事信託の制度にはきちんと活用すれば優れたメリットがあります。
だからこそ私は積極的にその活用の提案の情報発信を続けています。
しかし制度を理解しきちんと活用しなければ大きなリスクが発生してしまいます。

その中の一つとしてしばしばみられるのは、
お子様が親のために民事信託で助けたいという思いが強すぎるあまりに、
全てをお子様が決めてしまおうとしてしまうケースです。

「親の財産を管理したい」と考えるお子様からの民事信託に関する相談は多いです。
親の身体の衰えが隠せなくなり、物忘れも多くなるのを目にして、
親の認知症の問題が現実になる前に何とかしたいという思いが強いです。
お子様が自分で調べて動くこと自体には何ら問題はありませんし
相談の意思疎通もスムーズに進められますのでありがたいと思います。

ところが、これが度を過ぎると親に直接会って意思を確認しようとしても
「話がまとまったら私から親に説明するから会っていただく必要は無い」
「親に過度の負担はかけられないから会わせるのは難しい」
とお子様に言われてしまう場合もあります。

極端な話をすれば、信託について親にあらかじめ相談をしていなかったり、
親に隠したまま信託組成できるかどうかを聞いてくるご相談者もいらっしゃいます。
そうなると親が本当に民事信託を活用する意思があるか確認できず、
これ以上進めることは困難になります。

信託は大原則として「託す人自身の意思と託す目的」が求められます。
この場合、親の「この子にこの財産を信じて託する」という意思が必要であり
お子様一人の判断だけで進めて組成してしまうものは
信託契約書の文面をいくら整えても、それは決して信託ではありません。

信託はあくまで委託者の思いに従って受益者の利益のために機能するものです。
受託者の独断で受託者の思いを実現させるものではありません。

いくら民事信託が良い制度で活用すべきケースだと確信していたとしても
親の意思を蔑ろにしてお子様の思い込みで進めれば横領になりえますし、
もし他に信託組成に関わらないご兄弟が他にいらっしゃれば
その組成内容によっては兄弟間の紛争を起こしてしまう恐れも出てきます。

資格者専門職が民事信託の組成を承る場合にまず留意するのは
託す人自身の信託の意思と託される人への信頼関係があるか、です。
私はその確認を直接面談の上で確認してからでなければ進めません。

そして、そうした確認を疎かにしてでもとにかく組成を急ごうとする
資格者専門職がいるとしたら、それは大変危険なことだと考えます。

民事信託の組成運用にあたってはその本質を決して疎かにしてはなりません。
リスクを発生させないために、安心な制度の活用への追求は欠かせません。

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